クリエイティブな販売戦略で、北海道の菓子を世界へ。【北海道コンフェクトグループ株式会社】
2023年8月14日 公開
昨年秋に設立された北海道コンフェクトグループ株式会社は、今年で創業40周年を迎えるきのとや、「ノースマン」で知られる千秋庵製菓をはじめ複数の菓子メーカーを束ねる持ち株会社。原材料やコンセプトにこだわったさまざまなブランド菓子を展開し、話題を呼んでいる。代表取締役を務める長沼さんに、これまでの経緯や北海道の菓子が持つ可能性と展望を伺った。
きのとやで学んだ、「新しい価値をつくる」重要性。
長沼さんはきのとや創業家の出身。幼いころから働く父親の背中を見て育ち、いずれ会社を継ぐというビジョンは物心付いたころから持っていたという。東京の大学で商学を学び、より多くの経験を求めて大手商社である丸紅株式会社に入社。輸入菓子の国内営業や菓子に関する中小企業の海外進出を支援する仕事に携わっていた。
「入社して1年が経ったころ、香港の投資家に上海で菓子屋を開きたいと相談されて、退職を決意しました。ところが、僕の力不足や話の食い違いにより計画が頓挫してしまったんです。この出来事をきっかけに製菓や菓子ビジネスに関する知識不足を痛感した僕は、現場で菓子をイチから勉強しようと考えるようになりました」
24歳で北海道へとUターンし、家業でもある株式会社きのとやに入社した長沼さん。当時のきのとやは、新千歳空港店で新ブランドを展開していたものの、1日の売上げは5万円ほどと、上手くいっているとは言えない状況だった。立て直しを余儀なくされた長沼さんが目を付けたのが、店頭で冷蔵販売していたチーズタルトだ。
「それまでは一度焼いたものを冷やして販売していたタルトを、焼きたてで提供することにしました。工夫したのは味ではなく、見せ方。焼きたてであることをPRするために、あえて鉄板ごと店に並べるスタイルに変えたんです」
このアイデアが爆発的なヒットとなり、1日50個ほどだった販売数が100倍の5000個に増えた。「見せ方を変えるだけでこんなに売上げが変わるのだと、自分でも驚きました。その後も商品開発だけではなく、こうした販売戦略を練ることに重きを置いてさまざまな挑戦を繰り返しました。失敗に学びながら成功に至るまでの過程は、大きな自信につながりました」
「入社して1年が経ったころ、香港の投資家に上海で菓子屋を開きたいと相談されて、退職を決意しました。ところが、僕の力不足や話の食い違いにより計画が頓挫してしまったんです。この出来事をきっかけに製菓や菓子ビジネスに関する知識不足を痛感した僕は、現場で菓子をイチから勉強しようと考えるようになりました」
24歳で北海道へとUターンし、家業でもある株式会社きのとやに入社した長沼さん。当時のきのとやは、新千歳空港店で新ブランドを展開していたものの、1日の売上げは5万円ほどと、上手くいっているとは言えない状況だった。立て直しを余儀なくされた長沼さんが目を付けたのが、店頭で冷蔵販売していたチーズタルトだ。
「それまでは一度焼いたものを冷やして販売していたタルトを、焼きたてで提供することにしました。工夫したのは味ではなく、見せ方。焼きたてであることをPRするために、あえて鉄板ごと店に並べるスタイルに変えたんです」
このアイデアが爆発的なヒットとなり、1日50個ほどだった販売数が100倍の5000個に増えた。「見せ方を変えるだけでこんなに売上げが変わるのだと、自分でも驚きました。その後も商品開発だけではなく、こうした販売戦略を練ることに重きを置いてさまざまな挑戦を繰り返しました。失敗に学びながら成功に至るまでの過程は、大きな自信につながりました」
ブランドそれぞれの個性を生かし、共に成長する。
自信を付けたことで自らも起業への思いが強くなり、26歳で再び上京。新たな菓子ブランドを立ち上げるなど成功もあったものの、人生の見つめ直しや酪農の可能性を学ぶために31歳からの1年間をアメリカで過ごした。そして再び北海道へと戻り、設立したのが北海道コンフェクトグループ株式会社だ。
「きのとやだけではなく、新たに立ち上げた酪農の会社、資本提携した『千秋庵』など複数の会社からなるグループ会社です。菓子はコンビニスイーツのブームに代表されるよう、競争が非常に激しい分野。一つのブランドだけで生き抜くには限界があるからこそ、それぞれの会社が同じような菓子を作るのではなく、ニッチなカテゴリーの菓子ブランドを複数生み出す必要がある。それぞれの個性を伸ばし、グループ全体で成長していくことを目指しています」
全社で心掛けているのは、長沼さんの原点でもある販売戦略、つまり「新しい価値をつくる」ことだ。ボトムアップでアイデアを募り、じっくりと時間をかけて戦略を練っているのだという。ITやアパレルといった職種からの転職者を招き入れ、創造性ある会社を目指している。
「菓子作りはクリエイティブな仕事です。おいしさも重要ですが、まずは口に運んでもらうためにデザインにも力を注いでいます。お客様にワクワクをお届けするためには、作り手であるスタッフ自身がワクワクする必要がある。そして、ワクワクする仕事を生み出すためには成長が必要だととらえています」
「きのとやだけではなく、新たに立ち上げた酪農の会社、資本提携した『千秋庵』など複数の会社からなるグループ会社です。菓子はコンビニスイーツのブームに代表されるよう、競争が非常に激しい分野。一つのブランドだけで生き抜くには限界があるからこそ、それぞれの会社が同じような菓子を作るのではなく、ニッチなカテゴリーの菓子ブランドを複数生み出す必要がある。それぞれの個性を伸ばし、グループ全体で成長していくことを目指しています」
全社で心掛けているのは、長沼さんの原点でもある販売戦略、つまり「新しい価値をつくる」ことだ。ボトムアップでアイデアを募り、じっくりと時間をかけて戦略を練っているのだという。ITやアパレルといった職種からの転職者を招き入れ、創造性ある会社を目指している。
「菓子作りはクリエイティブな仕事です。おいしさも重要ですが、まずは口に運んでもらうためにデザインにも力を注いでいます。お客様にワクワクをお届けするためには、作り手であるスタッフ自身がワクワクする必要がある。そして、ワクワクする仕事を生み出すためには成長が必要だととらえています」
北海道と菓子ビジネスの未来を、チャレンジ精神で切り拓いていく。
長沼さんは北海道の未来を、観光と農業が支えていくと見通しているという。会社が目指すのは双方にまたがるブランドをいくつも生み出し、全世界へと届けること。
ロールモデルとなるのはイタリアやフランスの菓子メーカー。最初はお土産品を作るところからスタートし、全世界に輸出する流れを作ることで企業成長を遂げたという共通の経緯があるのだと長沼さんは話す。
「北海道の菓子はクオリティーが高い一方で、非常に単価が低い。逆に言えば低コストで菓子を作って売ることのできる環境だからこそ、輸送コストが掛かったとしても値段を抑えて輸出ができる。海外進出に向けた道のりは遠くないと考えています」
この目標のためにも、新しいことには積極的にチャレンジしていくべきだと語る長沼さん。
「初めから100%成功するなんてあり得ません。まずは5割方ダメだと分かっていても世に出し、お客様やマーケットの反応を見ながら変えていけばいいと思っています。これだけ色々な菓子が世の中に溢れている今、いくらおいしくても既視感のあるものは売れません。味のクオリティーが重要なのは大前提として、新しいコンセプトで創造することに真の価値がある。そこにたどり着くためには、挑戦し続けるしかないと思っています」
ロールモデルとなるのはイタリアやフランスの菓子メーカー。最初はお土産品を作るところからスタートし、全世界に輸出する流れを作ることで企業成長を遂げたという共通の経緯があるのだと長沼さんは話す。
「北海道の菓子はクオリティーが高い一方で、非常に単価が低い。逆に言えば低コストで菓子を作って売ることのできる環境だからこそ、輸送コストが掛かったとしても値段を抑えて輸出ができる。海外進出に向けた道のりは遠くないと考えています」
この目標のためにも、新しいことには積極的にチャレンジしていくべきだと語る長沼さん。
「初めから100%成功するなんてあり得ません。まずは5割方ダメだと分かっていても世に出し、お客様やマーケットの反応を見ながら変えていけばいいと思っています。これだけ色々な菓子が世の中に溢れている今、いくらおいしくても既視感のあるものは売れません。味のクオリティーが重要なのは大前提として、新しいコンセプトで創造することに真の価値がある。そこにたどり着くためには、挑戦し続けるしかないと思っています」
北海道コンフェクトグループ株式会社
2022年設立。株式会社きのとや、千秋庵製菓株式会社、Kコンフェクト株式会社、株式会社COC、株式会社ユートピアアグリカルチャー、北の食品株式会社を束ねる持ち株会社。「まだ見ぬおいしいを、北海道から」をコンセプトに多数のブランドを発展させ、素材にこだわったおいしい菓子を作り続けている。
北海道札幌市中央区北2条西10丁目2番地7 Wall003
https://hokkaido-confect.com/
https://hokkaido-confect.com/

本インタビューはUHB(北海道文化放送)のトーク番組「BOSS TALK」とのコラボ企画により収録されました。
BOSS TALK
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
北海道を愛し、北海道の活性化を目指す“BOSS”が北海道の未来と経営について楽しく、真剣に語り合う“TALK”番組。独立するまでの道のり、経営者としての思い、転機となった出会いや目指す未来などを語ります。
UHBにて毎週火曜日深夜0時25分〜放送中!
※番組は2023年9月26日で終了しています。
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