「上司選択制度」をはじめユニークな働き方を確立。社員が幸せになるための選択肢とは。【さくら構造株式会社】
2023年10月16日 公開
建築分野において荷重や災害に耐えるために必要な「耐震設計」の分野で2006年に創業したさくら構造株式会社。現在では社員数100名を越え、全国に事業を展開するまでに成長を遂げています。近年では部下が上司を決める「上司選択制度」などの働き方改革を行い、全国的に話題となりました。このユニークな取り組みや背景にある思いについて、代表取締役の田中真一さんにお話を伺いました。
異色の経歴から手探りの創業へ。
田中さんが創業するまでの経歴は実にユニーク。進学校からの大学受験に失敗し、すすきので数年間バーテンダーとして勤務。その後、布団販売の営業職を経て「これからは建築だ」と専門学校に通い、構造設計事務所を経て創業したというのが同社です。田中社長は自らを「この経歴の通り、社会の細かなルールや常識を嫌う人間なので…」と前置きします。
「当社は私一人で実家の一室を借りて立ち上げた会社です。事業拡大と共に従業員数は拡大していきますが、創業からしばらくはルールなどは設けず、ただがむしゃらにみんなと朝まで働いていました」
働き方を見直す契機となったのは創業から5年ほどが経ったころ。従業員数も30名を越え、東京や大阪にも拠点を設けるまでに事業が拡大してきたタイミングだと言います。
「自分一人でマネジメントができない人数になってきて、気付けば顧客とのトラブルも絶えず、社内の人間関係も手がつけられない状況になっていたんです。すべての原因は、私の『言わなくても分かってるだろう』という思い込みにありました」
田中社長は自らの考えを改め、社内制度を次々と設けたり、マニュアルを作るなど「言語化」を通して社員をまとめることにします。手始めに取り掛かったのが、お客様と取引の際に手渡す「さくらの約束」という、説明事項や契約事項を記載した書類でした。
「構造設計は、事前にさまざまな取り決めを説明しておかなければ、顧客とのトラブルが発生しやすい分野です。しかしエンジニアが中心の会社という性質上、社員全員が意思疎通が得意なわけではありません。『さくらの約束』を通じて、どんなにコミュニケーションが苦手なエンジニアでもお客様と、トラブルなく取引できるようにしたんです」
「当社は私一人で実家の一室を借りて立ち上げた会社です。事業拡大と共に従業員数は拡大していきますが、創業からしばらくはルールなどは設けず、ただがむしゃらにみんなと朝まで働いていました」
働き方を見直す契機となったのは創業から5年ほどが経ったころ。従業員数も30名を越え、東京や大阪にも拠点を設けるまでに事業が拡大してきたタイミングだと言います。
「自分一人でマネジメントができない人数になってきて、気付けば顧客とのトラブルも絶えず、社内の人間関係も手がつけられない状況になっていたんです。すべての原因は、私の『言わなくても分かってるだろう』という思い込みにありました」
田中社長は自らの考えを改め、社内制度を次々と設けたり、マニュアルを作るなど「言語化」を通して社員をまとめることにします。手始めに取り掛かったのが、お客様と取引の際に手渡す「さくらの約束」という、説明事項や契約事項を記載した書類でした。
「構造設計は、事前にさまざまな取り決めを説明しておかなければ、顧客とのトラブルが発生しやすい分野です。しかしエンジニアが中心の会社という性質上、社員全員が意思疎通が得意なわけではありません。『さくらの約束』を通じて、どんなにコミュニケーションが苦手なエンジニアでもお客様と、トラブルなく取引できるようにしたんです」
炎上を防ぐための制度「ドラゴンマネジメント」
「さくらの約束」を制定して以来、顧客との信頼を積み上げていった同社。しかし社内の人間関係を巡るトラブルは変わらず、会社を離れる社員も現れていきました。
「僕はサラリーマン時代の職場で経験した『残業=偉い』という考えや、年功序列といった古い制度を嫌っていたので、当社では実力主義として個々の売上を評価していたんです。ところが、数字ばかり基準にしているとスタンドプレーが目立つようになる。ただでさえ構造設計は個人プレーが多く、一人が責任を背負ったり、孤立したりしやすい分野。こうしたすべてが積み重なり、隣で仲間が〝炎上〟していても『自分には関係がない』と助け合わない社員ばかりになっていたんです」
社内に向けて田中代表が考案したのが「ドラゴンマネジメント」という独自の人材育成制度。
「その役割は、部下が〝炎上〟した際にリーダーが個人プレーからチームプレーへと転換し、チームに業務を振り分けてトラブルを解決することです。更に、おせっかいなほど部下たちの世話を焼き、部下たちの幸せな働き方を実現させる。炎上や困難をトラブルとしてとらえるのではなく、仲間たちと一緒に敵に立ち向かうRPGゲームになぞらえ、解決する最強のリーダーを『ドラゴン』と名付けたんです。この制度の影響でチーム意識が向上し、会社としての結束力も、お客様からの信頼も更に得ることができました」
「僕はサラリーマン時代の職場で経験した『残業=偉い』という考えや、年功序列といった古い制度を嫌っていたので、当社では実力主義として個々の売上を評価していたんです。ところが、数字ばかり基準にしているとスタンドプレーが目立つようになる。ただでさえ構造設計は個人プレーが多く、一人が責任を背負ったり、孤立したりしやすい分野。こうしたすべてが積み重なり、隣で仲間が〝炎上〟していても『自分には関係がない』と助け合わない社員ばかりになっていたんです」
社内に向けて田中代表が考案したのが「ドラゴンマネジメント」という独自の人材育成制度。
「その役割は、部下が〝炎上〟した際にリーダーが個人プレーからチームプレーへと転換し、チームに業務を振り分けてトラブルを解決することです。更に、おせっかいなほど部下たちの世話を焼き、部下たちの幸せな働き方を実現させる。炎上や困難をトラブルとしてとらえるのではなく、仲間たちと一緒に敵に立ち向かうRPGゲームになぞらえ、解決する最強のリーダーを『ドラゴン』と名付けたんです。この制度の影響でチーム意識が向上し、会社としての結束力も、お客様からの信頼も更に得ることができました」
時代に合った選択肢で幸せになれる会社を
2019年、田中代表は更なる働き方改革に踏み出します。それが冒頭に紹介した「上司選択制度」です。
「ある時、退職を願い出た社員に原因を深堀りしてみると、担当上司一人との人間関係に起因していたんです。社員が会社を辞めずに済み、柔軟にチームを変更できるよう単純な発想で考案したのがこの制度でした」
発表当初、上司にあたる社員たちは戸惑いを覚えていたものの、若手たちは好意的な反応を示したそう。制度化した後は人間関係のトラブルが減り、更に向上心のある若手の中には「この上司に師事したい」という前向きな異動を願い出た社員もいたのだとか。
「もちろんリーダーによって人気、不人気の差は出てしまい、部下が離れ続けた場合はチームが解散となります。しかし私は職場を、誰もが置かれた場所で輝けるのが理想だと思っていますので、リーダー職を離れた社員はプレイヤーとして力を発揮してもらえばいいと思っています」
また「苦手な上司と我慢して働くほうが成長につながる」といった声も聞こえてきたそう。しかし田中代表は「今はそんな時代じゃない」と一蹴します。
「確かに、成長につながるという考えは間違いではありません。20年、30年と同じ会社で働いたら未来が保証されていた昭和と異なり、一人ひとりに応じた多様な働き方が大切になる時代です。社員に対して『選択肢』を用意することが、幸福につながると考えているんです」
現在も部下たちとさまざまな試みをしながら「社員の幸せ」について模索し続けているという田中代表。「幸福とは哲学的なテーマで、明確な答えはありません。でも、だからこそみんなで追求を続ける会社でありたいんです」と笑顔を見せてくれました。
「ある時、退職を願い出た社員に原因を深堀りしてみると、担当上司一人との人間関係に起因していたんです。社員が会社を辞めずに済み、柔軟にチームを変更できるよう単純な発想で考案したのがこの制度でした」
発表当初、上司にあたる社員たちは戸惑いを覚えていたものの、若手たちは好意的な反応を示したそう。制度化した後は人間関係のトラブルが減り、更に向上心のある若手の中には「この上司に師事したい」という前向きな異動を願い出た社員もいたのだとか。
「もちろんリーダーによって人気、不人気の差は出てしまい、部下が離れ続けた場合はチームが解散となります。しかし私は職場を、誰もが置かれた場所で輝けるのが理想だと思っていますので、リーダー職を離れた社員はプレイヤーとして力を発揮してもらえばいいと思っています」
また「苦手な上司と我慢して働くほうが成長につながる」といった声も聞こえてきたそう。しかし田中代表は「今はそんな時代じゃない」と一蹴します。
「確かに、成長につながるという考えは間違いではありません。20年、30年と同じ会社で働いたら未来が保証されていた昭和と異なり、一人ひとりに応じた多様な働き方が大切になる時代です。社員に対して『選択肢』を用意することが、幸福につながると考えているんです」
現在も部下たちとさまざまな試みをしながら「社員の幸せ」について模索し続けているという田中代表。「幸福とは哲学的なテーマで、明確な答えはありません。でも、だからこそみんなで追求を続ける会社でありたいんです」と笑顔を見せてくれました。
さくら構造株式会社
建築構造設計を主力とする企業。全国に拠点を持ち社員数は100名を超える。「地震にこそ、強い自信を。」を理念として業界トップシェアの獲得や、日本の耐震技術を世界に広めることを目指している。
北海道ビジネスニュース
最新記事5件
81歳が新設した、出会いと憩いの卓球場「ピンポンコロシアム」
2025年3月24日 公開
81歳で事業を立ち上げた代表の上田浩さんに、立ち上げに懸けた思いや、今後の展望を伺いました。
出版を通して、経営に悩む北海道企業の課題解決に挑戦する。【株式会社エムジー・コーポレーション】
2025年3月10日 公開
代表の後藤章仁さんに、後継後の取り組みや今後の展望などを伺いました。
買い物も遊び場もひとつに。現役ママが立ち上げた理想の育児の場「Acoco」
2025年2月10日 公開
代表の古川遥さんに、お店を立ち上げた経緯や、開店後のさまざまな変化、今後の展望を伺いました。
目指すは南区の地域活性化。不動産業を通して、学生や高齢者をサポート。【株式会社アクト】
2025年1月20日 公開
株式会社アクト代表の河村直樹さんに、企業の経緯や今後の展望を伺いました。
鍛え上げたのは筋肉とプロ意識。〝マッチョ介護士〟で、介護福祉業界に革命を。【NOIE SAPPORO(ノイエ札幌)】
2024年11月18日 公開
執行役員・営業本部長の西松伸悟さんと、「マッチョ介護士」を目指して奮闘中の鈴木拓己さんにお話を伺いました。