北海道ビジネスニュース【野口観光ホテルプロフェッショナル学院】
2018年10月1日 公開
北海道の観光業界を本気で見つめた人材育成の取り組み。
今年の4月、苫小牧市に職業訓練校「野口観光ホテルプロフェッショナル学院」を開校したことが大きな反響を呼んでいます。
同学院の山本雄輝さんに設立の経緯や目的をお聞きしました。
観光業界のやりがいを伝え、若手の離職を防ぐために。

野口観光ホテルプロフェッショナル学院事務課
山本雄輝さん
「開校準備を始めたのは昨年ですが、構想自体は長い間温めていました。先代の社長(故・野口秀次氏)は人を育てることに思い入れが強く、故郷の静岡県下田市に返済不要の奨学金制度を設けたこともあります。若者に未来や希望を託すという意思を、職業訓練校という形で受け継いだわけです」
一方、ホテルに限らず、観光業界全体として若者の離職率が高いことは積年の課題。山本さんは、お客様から求められるおもてなしのレベルが高く、仕事のやりがいを感じる前に壁にぶつかって辞めてしまうのではないかと分析します。
「学院ではホテルの業務や楽しさを事前に学び、段階を踏んで成長できるため、現場に出た時のギャップを埋めるのにも効果的だと思います」
学院生は社員としての給与や福利厚生を受けながら学べるという好待遇。全道と青森の高校に周知キャラバンを組み、この仕組みを丁寧に説明した結果、30名ほどの定員に対し50名の希望者が集まりました。
学んだ知識をすぐに現場で生かせる「実学」の場。
「まず、講師陣は当社の従業員。各ホテルの支配人やマネージャーといった経験豊富なプロが、実体験を交えて現場に直結することを伝えています。机上でフロント業務やレストランサービスを学び、例えば座席の配置を覚えたら、すぐ隣の『新苫小牧プリンスホテル「和〜なごみ〜」』のレストランで実践の場を設けられるのも成長が早まるポイントです」
まさに実学という言葉がピッタリです。他にも、「日本の宿おもてなし検定(初級)」や「サービス接遇検定(3級)」、「観光英語検定(3級)」を必修資格とし、任意で中国語や韓国語の検定資格も取得できます。
「学院生は、そもそもホテル業界を目指している意識の高い若者ばかり。吸収力や伸び幅には目を見張るものがあります。先日も夏季就労としてグループホテルで3週間の研修を行い、学院生の生き生きとした表情に手応えを感じました」
グループワーク中の学院生に話を聞くと、「講師の方は先生というより上司なのでいつも姿勢を正しています。毎日が小テストのようです」「実技では注意を受けることもありますが、現場で必要な技術が学べて良い経験になりました」と瞳を輝かせていました。
人を育てずして、観光業界に未来はない!
「専門学校とは違い調理師免許は取得できませんが、社員として2年間の実務経験を積んだと見なされるため、卒業時には受験資格が得られるんです。もちろん、試験対策講座も開いてバックアップします」
開校から約半年。学院は特に高校の教員に高く評価され、経済的な理由から大学や専門学校に進学できない家庭にとっても新たな選択肢として評判です。最後に気になることを質問。卒業後は必ず野口観光グループに残らなければならないのでしょうか。
「う〜ん…、私としては残ってほしいです(笑)。けれど、学院で学んだことを他のホテルで生かすのも止めません。なぜなら、この学院は北海道の観光業界で活躍する若手を育み、業界全体を盛り上げることが目的だからです。人を育てずして、観光業界の未来はない…私たちはそう考えています」

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現在のところは1日8時間の内、7時間が教科、1時間が就労実習。自由時間に自習する学院生も多いとか。
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フロント業務をトレーニングする学院生。笑顔の接客もバッチリです。
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「講師の皆さんは自分で考え、行動できるよう私たちを導いてくれます」
野口観光ホテルプロフェッショナル学院

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