北海道ビジネスニュース【晴好雨喜(せいこううき)】
2021年10月18日 公開
夫婦2人で山を開拓しオープン。晴れの日も雨の日も美しい、未完のキャンプ場「晴好雨喜」

「山に住みたい」から見つかった北海道開拓時代の土地。
この広い土地はまだまだ進化の過程。そう話すのは、夫の優一朗さん。釧路市のご出身で美容専門学校を卒業後、東京で美容師として働き、ファッション雑誌の表紙ヘアメイクやモデル、芸能人のカットも担当するなど、第一線で活躍。しかし北海道の自然が恋しくなり7年前に帰郷し、先輩が経営する美容室の新店舗で店長として働き始めました。
そこにお客様として通っていたのが、札幌出身の菜緒子さん。お互いにキャンプ好きという理由からすぐに意気投合し、4年前に結婚。現在は3人のお子さんがいます。
かねてから「老後は山で暮らしたい」と語っていた優一朗さん。そんな夢を後押ししようと、昨年春に菜緒子さんが見つけたのが、後にこのキャンプ場となる7500坪(札幌ドーム1.7個分)の土地付き中古住宅でした。
「北海道の山林は大半が国有林なのに、どうしてこんなに広い土地があるのか疑問でした。取り寄せた資料に古い地形図が載っていたので、不動産屋さんに問い合わせたんです。すると、この土地は前オーナーのご先祖様が北海道開拓時代の初期に切り拓き、代々受け継いできた土地だと知りました」と菜緒子さん。
優一朗さんは「言わば『終の住処』と考えていた夢だったのですが、これだけの広さがあるのですから、せっかくなら理想のキャンプ場を造ろうと、2人で決意を固めました」と振り返ります。
家族と共に開拓も…寝ずに迎えたオープン日。
しかし、札幌市内で美容師としても働く優一朗さんはなかなか山へ来る事ができず、菜緒子さんも3人の子育てで大忙し。オープン1カ月前にようやく整地が終わり、ボランティアや地域の方、時にはお子さんの力も借りながら急ピッチで作業を進めたそうですが、オープン直前までは連日の徹夜続き。どうにか迎えた開業初日は、お互い疲労困憊な状態でした。それでも「作業はひたすら楽しかった」と2人は笑います。
絶え間なく変化を続ける自然本来の魅力を味わう場に。
「このネーミングのおかげか、雨が降ってもキャンセルするお客様がとても少ないんです。それから、完成しないキャンプ場というコンセプトも理解してくれているので、多少不便な点があっても『いいよいいよ!』って、受け入れてくれるお客様が多いのもうれしいですね」と菜緒子さん。
ところで、個人経営のキャンプ場はビジネスとして成立するのでしょうか?再び菜緒子さんに伺いました。
「確かに全国的にも例が少なく、ビジネスとしては不透明です。しかし『土地を貸す』という意味では、不動産やホテル、もっとラフな形で例えると民泊に近いかもしれないですね。規模やサービス次第では充分に成立するのではないでしょうか。実は固定資産税などの経費も、山奥なので抑えられているんです」
取材終盤、パラパラと雨が降りだしてきました。そんな様子を見た優一朗さんは「いやぁ、気持ちいい」と一言。
「季節や天候で移ろい行く姿、変わり続ける姿こそ、自然本来の魅力だと感じます。最近のグランピングとは対極にある価値かもしれないですね。これから僕たち夫婦が生涯をかけて、この場所に理想郷を作り上げていきますよ。その時はまた、取材に来てくださいね」。
-
2歳の末娘も、時々一緒に開拓作業(?)を進めたそうです。(提供写真)
-
現在も週3日は札幌で美容師として働く優一朗さん。協力してくれた地域の方へのお礼に髪を切ってあげたそうです。(提供写真)
-
来場客を出迎える手作りの受付カウンター。近年のキャンプブームも後押しし、初心者や親子で訪れる人も多いのだとか。

晴好雨喜 -SEICOUKI-

https://www.seicouki.com
北海道ビジネスニュース
最新記事5件
81歳で事業を立ち上げた代表の上田浩さんに、立ち上げに懸けた思いや、今後の展望を伺いました。
代表の後藤章仁さんに、後継後の取り組みや今後の展望などを伺いました。
代表の古川遥さんに、お店を立ち上げた経緯や、開店後のさまざまな変化、今後の展望を伺いました。
株式会社アクト代表の河村直樹さんに、企業の経緯や今後の展望を伺いました。
執行役員・営業本部長の西松伸悟さんと、「マッチョ介護士」を目指して奮闘中の鈴木拓己さんにお話を伺いました。