北海道発!商品誕生エピソード【寿司の名店が手掛ける、蝦夷前いなり/備 sonau(そなう)(札幌市)】
2021年5月31日 公開

アイデアを生んだ名店2代目との友情。

備 sonau 責任者/菊池 備さん
同店を経営するのは寿司の激戦区、すすきので30年以上営む「まる鮨」。親子2代にわたり常連に愛され、ミシュランガイドで星を獲得したほどの名店です。しかし菊池さんは、開店前は寿司職人ではなく、グルメサイトの営業担当をしていたのだとか。
「まる鮨の2代目大将である川崎純之亮とは幼なじみで、2人とも小さなころから寿司を食べて育ちました。まる鮨は決して安くはない寿司店ですし、いつも予約で埋まっています。地元の方にもっと手軽に寿司に親しんで欲しいという共通の想いがあり、5年前、川崎と共に新しい手土産の開発を始めたのが開店のきっかけです」
そこで、寿司職人の技を使ったツナやちらし寿司など、さまざまなレシピを試しますが、なかなか良いアイデアが生まれません。試行錯誤を続けること3年半が経ったある時、原点に立ち戻って考えを巡らせた菊池さんは、寿司の魅力はネタではなくシャリにあると気付きます。
「僕は『寿司とは酢飯を食べるためにある』と思っているほど酢飯愛が強いんです(笑)。酢飯を一番味わえる料理は何だろう、という発想からひらめいたのが、いなり寿司でした」
誰にとってもなじみやすいシンプルさに加え、常温保存やパッケージ化も可能で、手土産としてもぴったり。幼なじみ2人が描いた夢が、ついに動き始めた瞬間でした。
日本全国をめぐり、北海道らしい味を研究。
「理想の味を追求するため、東京から関西、九州まで津々浦々を巡りました。北海道と違い、各都市にはいなり寿司の専門店が多くあり、江戸時代から身近に親しまれてきた歴史があります。道民に愛される味とは何か、旅をしながら考えました」
寿司酢は親子2代に渡り引き継がれてきた「まる鮨」のレシピを基に、道民になじみ深い甘さの効いた“蝦夷前”にブレンド。油揚げは、つるりとした舌触りと、ジューシーな食感を両立させることを追求し、厳選を重ねました。
「苦労したのが、いなり寿司に合う、常温でもおいしいお米探しです。お米屋さんに通ったり、ネット通販で珍しいお米を探したり、来る日も来る日も食べ比べを続けました」
数十種類の中から決まったのが、宮城県大崎市産の「ささ結(ささむすび)」。冷めてからでもうまみや香りが感じられ、油揚げ越しでもわかるつややかな舌触りが、まる鮨の握りに最も近いことが決め手となりました。
パッケージや店舗のデザインは、川崎さんの知人であったデザイナーに相談。和の風情と高級感がありつつ、近代美術館前というロケーションを生かしたモダンでアーティスティックなデザインが誕生しました。
北海道の手土産に、いなり寿司を根付かせたい。
「まる鮨は長年コツコツとお店を営み、多くの常連さんに愛されてきました。当店も同様に細く長く、北海道の方に親しまれ、いつかは『老舗』と呼ばれる店となるのが目標です。お菓子に次ぐ選択肢として、いなり寿司を手土産の定番としてご愛顧をいただきたいと思います」
幼なじみ2人の挑戦は、まだまだ始まったばかりのようです。
ここがこだわり!開発のポイント
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常温でもうまみ広がる宮城県産「ささ結」
宮城県大崎市産の「ささ結(むすび)」を農家から直接仕入れ。かつて多くの寿司職人から愛されるも、病気に弱い事から生産量が減ってしまった、「ササニシキ」を直系に持つ、希少な品種です。 -
蝦夷前寿司の酢をいなりに合わせ配合
「まる鮨」で長年使用している甘めの酢がベース。お米の味を引き立たせるため、ほどよい濃さにブレンドしています。 -
舌ざわりと食感が絶妙な油揚げ
つるりとした舌ざわりと、ジューシーでしっかりとした食感を併せ持つよう、厚さや素材を追求した油揚げ。


備 sonau

北海道発!商品誕生エピソード
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