Smart AI City SAPPORO「SAPPORO×IT」 株式会社テクノフェイス 代表取締役 石田 崇

2020年3月1日 公開

AIの研究開発を軸に新しいまちづくりに貢献する

北海道大学発ベンチャー企業として創業したテクノフェイス。
人工知能の研究者たちが中心となり、オープンソースによるシステム開発とAI研究を事業の両輪として取り組む。
【interview-3】
株式会社テクノフェイス 代表取締役 石田 崇

いしだ・たかし
北海道大学工学部精密工学科を卒業後、同大学院工学研究科システム情報工学専攻で博士課程修了。2002年、株式会社テクノフェイスの設立と同時に入社。2010年に代表取締役に就任。さっぽろイノベーションラボ代表理事。札幌市出身。


―テクノフェイスは大学発ベンチャーとして設立されたそうですね?
北海道大学情報科学研究室で人工知能の研究をしていたメンバーによって2002年に設立されました。私は立ち上げメンバーではないのですが、社員第一号として採用され、創業時からこの会社で働いています。
大学時代に私が携わっていたのは人工生命やマルチエージェントといった分野の研究です。コンピューターの中に、あたかも意志を持った人のような存在がいて、私たちとコミュニケーションするという…。ある意味、今主流のAI技術よりもっと未来的なものをテーマにしていました。
当社が設立された背景には、北大で学んだ学生を始めとする「優秀な人材の受け皿」を作るという意味合いもありました。当時の北海道には先進的なITを活用している企業は少なく、優秀な人材はたいてい首都圏の大手企業に就職していました。しかし、そのままでは地元で技術者が育たない。そんな危機感から、高いスキルを持った若者が、存分に活躍できる場を北海道に作るということも会社設立の目的だったんです。

AI導入の実証実験からシステム開発まで一貫してできるのが当社の強み

―事業の中心や強みとしている分野を教えてください。
基本的には受託による開発業務がメインです。OSS(オープンソースソフトウェア)を活用した業務システムやクラウド上で動作するシステム開発、スマートフォン向けのアプリ開発なども行っています。
最近では、マルチビジョンなどのデジタルサイネージを直感的にコントロールできる「テクノヴィジョン」という自社製品も開発しました。もともとは受託案件で取り組んだ業務でしたが、社内の技術者が興味を持ったことで開発を継続しました。この頃は首都圏の展示会にも出展し、製品をアピールしています。
受託業務のうち、AIを活用したものとそうでないものの割合は半分ずつといったところ。AIが顧客企業のビジネスに使えるかどうか「当たりを付ける」作業は、試行錯誤の繰り返しで時間もかかります。しかし、そのような「研究室的な実証実験」を経て、実際の業務システムに組み込むまでを一貫して手掛けられる会社は全国にも少なく、それが当社の強みであると自負しています。

―AIを活用した開発事例にはどのようなものがありますか?
画像認識の分野では、地面の状況を撮影した画像を分析し、雪が積もっているか溶けているかを自動で判別する降雪監視システム、建築現場の工程判定システムや鉄筋判別システムを開発しました。
自然言語の分野では札幌市と共同で、交通機関の乗り換え案内を行うチャットボットの開発を行ったほか、ビジネスとはやや異なりますが、人工知能による機械学習でオリジナル俳句を作り出す「AI俳句」のプロジェクトにも参画しました。
最近では、放送業界のニーズに応えて音声合成エンジンの開発にも取り組んでおり、日本語の音声を深層学習させることで、自然な発声を実現する研究も行っています。

コストに見合った成果をAIが出せるかが重要になっていく

―AIをビジネスに活用したいというニーズは増えていますか?
AIブームが始まったころは、企業の話題づくりのために「よく分からないけどAIを使ってみたい!」といった依頼も多かったのですが、今はもう少し具体的な課題があって、機械学習のもとになるデータも用意した上で当社に依頼が来るケースが増えています。
ただ、現時点でAIが直接的な利益につながっている例は、業界全体を見てもまだまだ少数という印象です。データはあるけれど不十分だったり、AIを導入できたけれど思ったほどの成果が出せず、開発費用のほうが高く付いてしまったり。
少子化や人口減少の影響で人手不足になり、AIで省力化や効率化を図りたいというニーズは今後も増えていくと思います。だからこそ、AI導入ありきではなく、コストに見合ったパフォーマンスを得られるものにしていくことが、重要になると考えています。

―石田社長はさっぽろイノベーションラボの代表も務めていらっしゃいますね。
札幌には幅広い分野で、独自性があって尖った技術を持った企業がたくさんあります。さっぽろイノベーションラボはそうした企業の強みを組み合わせたり、また不足している部分を補完し合いながら、地域の発展のためのイノベーションを起こすことを目的としています。
当社はもともと研究者の集まりなので、正直、営業力には長けていません。だからこそユーザー側に強い企業とタッグを組むことで、当社の技術力を生かすことができるんです。

札幌の魅力を発信することが高度な技術集積につながる

―これからの札幌についてどう思われますか?
私は札幌出身で、これまでの人生のほとんどを札幌で過ごしています。愛着もありますし、この街の自然の豊かさや生活コストの低さなどは世界に誇れるものだと思います。だからこそ、技術を持った人材に向けて、札幌の魅力をアピールしていくことの重要性を感じているんです。
最近は札幌AIラボ(space360)のような拠点ができたことで、オープンなイノベーションが生まれたり、若い人たちによるスタートアップが生まれやすい基盤が整いつつあります。高いスキルを持った人たちが、東京と変わらないくらい面白い仕事ができそうだと思ってくれれば、札幌が高度な技術の集積地になっていく可能性があります。実際当社にも、AI研究ができる企業として道外の学生が注目し、入社してくれるようにもなりました。
今後も自社の技術力を磨きながら、地場に根ざした企業として地域に貢献していきたいと考えています。

株式会社テクノフェイス

札幌市中央区北1条西3丁目3番地
敷島北一条ビル 6階
TEL 011-242-6606
https://www.technoface.co.jp/

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